鍛冶屋日記

月別: 2012年9月

いの町商店街で継続的に開催している『七色ロード』は前回より『七色塾』なるものをメインのイベントに据えています。

七色塾とは

「各商店主が先生になり、専門知識やプロならではのコツを無料で提供し、お店の特徴・店主のこだわりや人柄を知ってもらって、お客様と信頼関係を築くことを目的とする。」

というものです。

つまり、まずは売り買いの発生しない所でお店とお客さんの出会いのチャンスを作り、お店のファン、商店街のファンになってもらうためにがんばっていきましょう、って取り組みです。

7月に1回目をやって概ね好評。次回は12月2日。

先生としてのスキルアップと講義内容のブラッシュアップ、また新しく挑戦してみようという商店主さんへのデモンストレーションを兼ねて、実行委員がお互いに先生、生徒になって模擬講座をやってます。

話聞くのめちゃ楽しい。

最初のチャレンジャーは植木屋さんとクリーニング屋さん。職人ストリートの若手のホープの二人です。

「枝が伸びて道にはみ出して困ってる植木の対処法」

「Yシャツのアイロンの掛け方」

簡単そうに話すけど自分でやれって言われてもなかなか大変そうやにゃあ、って感じたので最後に2人に質問しました。

「それやってもらったらおいくら?」

植木屋さん
「落ち着かすには3年はかかります。一回行って5000円。それが3回ですね。」

クリーニング屋さん
「洗ってアイロンピシッと掛けて300円。」

これを聞いてすごいことに気が付きました。

身近に役に立ちそうな知識や技を職人さんから詳しく丁寧に教えてもらった結果(もちろん教える側も「こうすれば自分で出来るきやってみてね!」って気持ちで話してくれてるはずなのに)、頭に浮かんだのは

「プロであるこの人達に頼もう。」

でした。

もうほんとに完全に罠です。羊のふりした狼です。すごい…。

次回七色ロード12月2日(日)いの町商店街にて

「包丁の砥ぎ方教えます。」

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土曜日は『仁淀川・神楽と鮎と酒に酔う』で「コローザ」焼いて来ました。あんまり働いてないけれど。みんな働き者で助かります。

評価も売れ行きもまずまずながら途中から雨になり目標数量完売ならず。

計算すると収支はチャラ。
道具揃えた分だけ赤が出たかも。
残りをみんなで分けた分(コローザ10コ)が日当です。
稼ぐって難しい…。

でも、またきっとどこかで焼くので食べに来てください。コローザの逆襲、ご期待ください。

売れた売れんは別にして初めて体験した『神楽と鮎と酒に酔う』なるイベントは素敵でした。

河原で過ごすのんびり土曜日の午後。
昼間っから飲むビール。
日が暮れると灯る約1000個の竹灯り。
暗闇の川を下ってくる4隻の舟の上で揺れる松明、火振り漁。
神楽は見れず。

いろいろ非日常。幻想的でした。

涼しくなった秋の夕暮れから夜にかけての素晴らしいイベントでした。

未体験な方は来年こそ是非。

お薦めです。

明日は仁淀川にて『神楽と鮎と酒に酔う』でコローザ焼きます。
その前に今夜600個包みます。何時に寝れるかなぁ。

和包丁の弱点。

「錆びる」の次にくるのが「柄が腐る」です。
毎日水に濡れてがんばってるので仕方ない面はあります。

「いっつも柄がダメになる。」
ってお客様には

「使わない時は包丁立てに立てて保管してください。刃を下に、柄が上になるように逆さにしとけば水分は柄の方に行かないので長持ちしますよ。」

って保管方法をお伝えするとともに、なかなかやらんろうけどなぁ、って思いながら

「柄の差し込み口にロウを垂らしておくと水が入るのを防げますよ。」

ってアドバイスをしてました。

じゃあ最初っからしちょったらいい。うん、その方が絶対いい。

ってことで半年くらい前から新しく出来上がった包丁には柄を付けた時点でロウを垂らして防水加工。

この部分。

修理の時も柄を付け替えたやつにはひと手間施してます。

刃物としての機能には関係ないかもしれませんが、トータルで見れば小さな小さな進歩です。

あと一歩だけ前へ。

誰にも気付いてもらえないとさびしいので書いてみました。

続けます。

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「友達になってください。」って言って友達になったことは今までなかったのでだいぶドキドキしましたが、誰にフラれたかわからないようにいっぱい告白してみました。

「受け入れられるってうれしいな。肩の力も抜けて行く。」
(斉藤和義『ベリーベリーストロング』より)

昨日は日曜日から延期に延期を重ねた息子たちの中学校の体育祭。

涼太くんにとっては中学最後の体育祭です。
昨年は骨折完治前で走れなかったなかったので2年振りの出場。
保育園からずっと見てきたかけっこを見るのもこれで最後かも…。

走ったり騎馬戦の馬の先頭になったり綱引きもチームの一番先頭。

また、はりきって白組の応援団として前で応援合戦してました。
掛け声かけたり踊ったり。

うん、かっこえい。
こりゃあモテるがじゃないろうか。

リレーの選手なんかには一切選ばれてないのに誰より汚す体操服。

これは遺伝や。

さすが。
楽しんでました。

あ、りんくん頭が痛くて病院へ。お休み。
凜らしい。

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七色ロードの会にて。

ふと決めるべき議案を思い出し
「先週話したあの件どうなりました?」って質問したら

「あれはフェイスブックで流れたろ。」

…フェイスブックしてない。

「あ、笹岡くんは知らんがや。」って…。

12人集まっての会で他の全員が情報を共有してて僕だけ知らん。

ものすごい疎外感。ナニヨコノカイ…。さびしい。してない人はいないものとして進むがや。

一生懸命平静を装って「あ、決まったならいいです。」って強がりましたけど。

ずっと、フェイスブックはやった方がいいですよ、やりましょう、仕事のためにも、話が早いし、って言われてたし、しっかりと必要性も感じてましたが、「やれ」と言われれば言われるほどやりたくなくなるめんどくさい性分で。
今回のさびしいエピソードでまたスタートが先延ばしになるなぁ、って方向に心が向きました。意地ってやつです。

ですが、翌日メンバーの一人に
「フェイスブック登録してよ。何にも書かんでえいき。○○さんが七色ロードについてもどんどん情報流すき見てくれちょかんと困る。」

どストレート。

けれん味がないってこういうことやね。

やらざるを得ないところに僕を連れて行ってくれたのでFacebookを始めます。

連れて行ってくれたのはPさん
気持ちよし。

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昨日は一日外回り。
ひと月振りに会った人を見て「老けたにゃあ…。」って思うこと二度三度。自分もそうなんでしょうけど。業界が老いていく。

そんな中、ひとつ刃物に名前を彫ってもらうために彫金の職人さんを訪ねました。名前入れるだけでなく龍や虎なんかも彫金する職人さんです。

そしたらこんなお話が。

「親父がもう完全に仕事辞めることになったきね。」

親子二人でやって来られてましたが78歳の親父さん引退のお知らせ。
目が効かんとか腕が震えるとか。長い間酷使されて来たんでしょうね。お疲れさまでした。本当にお世話になりました。

そこから少しお話しました。
名前や銘を彫ることが出来る人はいても龍やら虎やら鶴やら亀やらを刃物に彫金出来る職人さんは高知だけじゃなく四国にもいないだろうこと。
何十年も値上げ出来てない安過ぎる値段の問題。本当に値段聞いたらびっくりします。
後継者がいないこと。娘さんしかいないのでおそらく自分の代限り、って。

「親父の場合は僕がおるきスムーズに辞めれたけど自分の時は後がおらんきなかなか辞めさせてもらえんろうねぇ…。」

本当に貴重な技術です。
絶滅する前にこういう技こそ全力で支えんといかんと思います。

いのに戻って偶然会った友達に話したら

「でも、国とか県とか町とかに頼っても無理ですよ。」

わからんではない。

けどね、本当にいなくなったら困ると思うがやけど。

土佐の刃物業界全体で支えることが出来んもんやろか。

「みんな値段倍で取ることにするき一人若い後継者を育ててください。」みたいな思い切った作戦。

こういうとこにこそ助成金とか入れたらいいのに…。

『技』がどんどんなくなります。
仕方ないことなのかなぁ…。

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「楽しく生きたもん勝ちやろ。退屈なやつらに俺たちの笑い声ば聞かせてやるったい。」
映画『69』の妻夫木くんのセリフより

組織からお金をもらって事業をやると好きなように出来ないことがだんだん出て来ます。当然ながら思い知ります。

「上からお金も出てるし、クレームが来るかもしれないので今の段階では出来ません。」

こっちとしてはそんな制約を受けても「そっか。じゃあこうしよう。」って全然平気で楽しく進めるだけなのだけれど、間に立つ人は大変だろうなぁと思いました。戦ってくれたんだろうなぁ。

文句言ってる(言いそうな)人達は自分たちのチャンスを閉ざしてしまってるんじゃないかなぁ。なんでその枠の中で自分に活かそうとせんがやろ。

「そっちばっかりお金使って。」

いい作戦があればそっちにも使えばいい。

代わりの案も提示せずに文句だけ。動きもせんのに。
組織で動くといつでもこうなる。

会社勤めの人からしたら「何をいまさら。」ってことながやろうけど。

文句言ってもらえる存在になれたら上等や。打ちたくなるようなる杭にならんとね。

今は本当にやる気のある限られた人達だけが「あーでもない、こーでもない。」ってやりゆう楽しい集団やけど、「あいつらがんばりゆうやん。手伝っちゃろう。」とか「楽しそう。ちょっとやってみようか。」とかって周りに思ってもらえるようにならんとね。対立する必要はない。

スタートから一年近くやって来て、少しずつやけど仲間も増えたし。
最近来んにゃあ…、って人もおるけど。

ちょっとずつちょっとずつ太くしていければいい。

続けよう、七色。

.

前々回書いた進む方向についてもう一つ。

土曜日に須崎の包丁鍛冶さんがうちに寄ってくれて話をしました。
この方は自分で作って都会のデパートの職人展とかへ売りに出てます。
問屋さんへの卸しが主の土佐の鍛冶屋さんの中では珍しい形態。
デパートで売る大変さ、掛かる経費なんかの話を聞きました。
「もしデパートに売りに行くやったら気をつけるべきこと教えちゃお。いつでも言うて来や。」
ありがたいことです。

でもやっぱりこっちへも向かわないと思いました。

名前を売ったりランクが高く見られたりってメリットは確かにあると思います。でもなぁ…。

少し前にまた別の高知の刃物屋さんがアメリカに刃物のお店を出すって記事が新聞に出てました。このパワーとテクニックとチャレンジ精神はすごいなぁと思います。

ここで僕の考え方。

地元いの町の家庭全部にうちの刃物を使ってもらえればずっと仕事出来るでね。
それは言い過ぎにしても高知市その他周りの町まで広げたらターゲットはいっぱいじゃん、と思います。

砥ぎ直しに持って来てもらえる距離、範囲。そこを狙う。売りっぱなしはさびしい。

ホームページでも販売してるので県外にも出してますけど、わざわざ探して見つけて買ってくれるお客様ははさみ屋の存在場所を知ってくれてます。
そう頻繁にはやり取り出来ませんが何かあったら連絡もらえるし、いざという時は頼ってもらえる距離。

全部が全部とはいかんかもしれんけど、きちんと繋がれちゅう感覚。

県外のイベントへ売りに出て行っても同じようにその感覚を持ってもらえるように接客・販売していきたい。

せっかく直接やりとりするのだから、必ず作り手の居場所を明示してお客様が求めてくれれば誰がどこで作ったか、どこへ問い合わせたら砥ぎ直し出来るかわかるように。

広がるのを拒むわけではなく、大きな経費をかけたり大きな投資をしたりして無理やり広げんでもいいんじゃないの?って。

近くの人に好きになってもらえればじわじわでもきっと広がるはずでね。これ大事。絶対大事。実は一番難しいことながかもしれんけど。

仕事の量として減りつつあるけれどベースに問屋さんや小売店さんへの卸し(親父さんが築いて来たもの)があるからこそこんな風に言えるのかもしれません。

地元の仲間の農家さんにも加工品を都会で売ろうとがんばってるとこもあります。それはそれで大正解だと思います。品が良いなら広めんといかん。

まぁ、地理的条件とか技術的な違いがあって何がベストな道かはそれぞれだとは思いますが、鍛冶屋って言ってもいろんなやり方があるんだなぁ、俺はこう思うなぁ、って考えたここ数日間でした。

こうやって文章にするとその考えにとらわれ過ぎて凝り固まってしまいますが(僕の悪いとこ)、いろんな人の話を聞いて理解した上で凝り固まっていけたらいいなぁ、と思います。

もし、いの町みんなが使ってくれたら周りの町の人達も使ってみたくなるはず。

高知のみんなに使ってもらえたら日本中に広がる可能性だってあるでね。

おー、前途洋々。

.

昨日帯屋町で売ってると県外から来たらしい制服姿の女子高校生のグループに声をかけられました。

「このあたりであたしたちが気兼ねなくごはん食べれるとこないですか?」

たしかに見回すと土佐料理とかカツオのタタキとか高校生は入りづらいお店が目につくエリアです。
角にあるお好み焼き屋さん『はこべ』を紹介したら帰りに寄ってくれて

「ありがとうございました。これ使ってください。」
ってお好み焼き屋さんの割引券をくれました。

「どっから来たが?」

「愛媛です。」

「そっか。また来てよー。」

かわいらしい。
彼女たちが大人になって高知に旅行に来てはさみ屋が帯屋町で包丁砥ぎよったら懐かしさに負けてひとつくらい買ってくれるはず。続けよう。高知旅行が第一日曜でありますように。

その後、一人の外国人さんに声を掛けられました。

「私のグランドファーザーもナイフメーカーしてました。ナイフだけでなく他にもアックスとかいろんなツールを作ってました。懐かしいです。」

野鍛冶やね。

「どこですか?国は。」

「チェコスロバキアです。」

おるね、鍛冶職人、世界に。

外国人の方と話してアヒアンのことを思い出しました。元気かなぁ。

あれからもう2ヶ月かー。

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人は一生のうちに何丁はさみを買うがやろ。はさみ屋は何丁作るがやろ。

今日は久しぶりの(って言っても1ヶ月ぶりやけど)おかみさん市。今年は春からいの町内でのイベントがいっぱいあったので1ヶ月ぶりに売りに出るとかなり久しぶりの感じがします。

普段より品揃えが充実してます。しっかり作れたのか売れてないのか。

先日お取引先の問屋さんが特注の鋏の見本を持ってお店に来られました。
その時にうちの包丁を見てくれて「包丁もやってるんですね。どれくらいで卸せます?」って聞かれました。
話を聞くと土佐の刃物業界では包丁鍛冶さんが忙しくて供給が間に合ってないそうです。

ですが、うちの場合は包丁はすべて手で砥いで仕上げてるので値段が合いません。逆にどれくらいで仕入れてるのか聞くと普通の万能包丁で一丁数百円…。うちの砥ぎ代と変わらんじゃん。そりゃ新規買いやって言いたくなるね。

問屋さん(場合によっては複数の)を通って小売店に並んで2000~3000円で売られてるので当たり前ながやけど。

「一回に200~300丁は注文出しますよ。」

「もっと手間省いた方法で数出来る様になったらまた声かけて下さい。売りますよ。」って言われました。

無理です。
そっちには向かいません。
それが向いてる職人さんもいると思いますが僕には向いてない。

あらためて自分の目指す方向を確認。

休み削って自分で売りに出て来てもそう簡単には売れんがやけどね。今まさに実感中。

「武士は喰わねど…じゃやっていけんろうが!」って親父と議論したこともあります。

でも、高楊枝の方から買いたくないっすか?もちろん喰わんといかんがやけど。

偉ぶるわけではありません。周りより少しお値段高くなっても少しお待たせしてしまっても、それによって売り先を増やすことが出来なくても、より良い品を作って出そう、っていう意味で意地張ろうぜってことです。

つまり、喰って行くための高楊枝だと信じてがんばっております。

餓死しませんように…。

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