鍛冶屋日記

月別: 2014年7月

「量より質の時代へ・生産量日本一に価値がなくなる」
農業のお話として聞いたお言葉を勝手に自分に置き換えて一人喜ぶ。ずっとそう思ってやってきました。そっち向かざるを得なかったのだけれど。

いの町の観光パンフレットを大量に手に入れました。
依然衰えを知らないふるさと納税からのご注文が12セット仕上がって発送しようとした時に思いつく。
「いの町のパンフレット入れて送ろう!」

観光協会にお願いして持って来てもらいました。

どんなきっかけであっても「いの町」を知って、そこの特産品が送られて来るのを待ってる人がたくさんいます。
そこに荷物を送るのに町のパンフレットを入れないのはもったいない。
その中の100分の1でも1000分の1でも将来町へ遊びに来てくれるかもしれません。

ってのが表の理由。

ここからが僕の目論見。

パンフレットには仁淀川とかUFOラインの綺麗な写真や土佐和紙の情報が載ってます。
包丁届いたらとりあえずパラパラめくってくれるはず。秋田や横浜や米子の方々が仁淀川を見る。

そういう人達がこの先「仁淀川」とか「土佐和紙」とかとテレビや新聞で出会ったらうちの包丁と高知の鍛冶屋を思い出してくれんかなぁと。
品は届くので包丁は使ってくれゆう状況ながやけどね。

どこかのキレイな川の映像やラフティングの風景を見ただけで刃物のイメージが蘇ったりするがやないろうか。

いの町とキレイな川とさとる包丁をセットで記憶してもらう。
何年か経って「この包丁はどこで買ったがやったっけ?」ってなった時に「いの町・包丁」とか「仁淀川・鍛冶屋」って検索してはさみ屋まで辿り着いてくれるように。

なんかすごく良い作戦に思えてきたので実行しました。それこそ1000分の1とか1万分の1かもしれんけど。

ただ注文した包丁が届くだけよりいいよね。
普段のはさみ屋のホームページからの通販のお客様(こちらは鋏を必要として探して探して来てくれるお客様ばかり)とは違う感覚でご注文くれたお客様やと思うし。

3月に初めてふるさと納税の注文がきて、売上はびっくりする程上がってますが、それで終わらせるのはもったいない。
国が「ふるさと納税の制度やめます」って言えばなくなる売上です。

せっかく出会えて実際に使ってもらえたお客さんを次にどう繋げるか。大事。

30数件品物を送った中でメールを2件、お電話で2件の反応をいただく。

「良いもの送ってくれてありがとう。」
「気に入って使ってます。」
「使いやすい。またふるさと納税で手に入れます。」
「息子に送ってあげたいのだけれど、どうすれば注文出来ますか?」

なかなかの手応えです。リーフレットやお手紙の効果もあるはず。切れ味だけでそうなれば理想やし楽やけど。

両方必要。全部必要。

買ってくれた、使ってくれたその先へ。

やれることはいっぱいある。
なら、やれることはやってみんとね。

今月初め、刃渡り25cmのでっかい四角い包丁のご注文をいただきました。
10日ほどしてからまたご来店。

「まだ出来ん?」
「お待たせしてます。もうちょっとです。」
「これあげるわー。早よ仕上げてよー。」

催促ついでににスイカをいただく。

これを切るがやね。スイカ包丁。
この時は焼き入れ終了したばかり。

あとは砥いで仕上げれば、って状態。

数日後、完成、無事お渡し完了。

包丁を買ってもらった上にスイカももらえるいい仕事。

鍛冶屋はいろいろいただけます。

セロリ収穫用包丁を作った時は新鮮セロリもらったし、タケノコ鍬の修理や柄の付け替えをしたらタケノコが届く。
猪肉やお魚も。
牡蠣を岩から剥がす道具を作ったら「しっかり使えたよー」ってでっかい牡蠣が届いたこともあります。

注文もらって作って代金もらって、時々その先におまけがある素敵な仕事。ありがたい。

先週末もまた別のお客様からお野菜いただきました。
鎌の研ぎ直しを預けてくれた後
「うちで作った野菜いる?昨日採ったやつやきちょっと元気ないけど。」
「ありがとうございます!」

キュウリ・ナス・カボチャ。
こんなにたくさん。

生産とか収穫とかに近い仕事ならではの贈り物に感謝です。

旬のものを採ったり切ったりするモノを作ったり直したりするので、
「まだー、急いでよー。」
ってよく急かされるけどね。
道具も時期を逃すと来年まで必要なくなったり。

旬。

お待たせしてます。
頑張ります。

先週、東京から帰省する高校の同級生からメール。

「19日から23日まで帰省します。ブログ見てたらいの町もいろんなことしてるみたいやね。どこかおすすめスポットある?」

はい、いの町への観光客まで作り出すことになりました。

ご家族連れなので、すぐに浮かんだ「仁淀川でのラフティング」と、今一番行ってみたい場所「UFOライン」をご提案。

プロの意見も聞いちょかんと、ってことで、その晩、会で会った観光協会の2人にも聞いてみました。
「お子さんおるならラフティング、カヌーでしょ。仁淀川です。」
「UFOラインは本当最高ですけどお子さんはちょっと退屈するかもね。遠いし。」

ほぼ同じお答えをいただく。

で、実際に帰省した同級生、今日息子さんを連れてはさみ屋に会いに来てくれました。

「ラフティングは明日の予約が取れた。今から仁淀川の下見に行ってくる。」

って言うので、準備しておいたいの町の観光マップ『いのナビ』を渡して

「あ、仁淀川登るがやったらこの辺に高知アイスのお店があるきアイス食べてきいやー。」

数時間後、facebookにあがってました。

「高知アイス、うま!」って。

もうちょっと頑張れば、いの町観光大使とかになれるがやないろうか。

町の活性化とか言いながら、あんまり結果も出てないけれど、このブログや僕のfacebookをきっかけにいの町に興味を持ってくれたのなら、日々のドタバタ奮闘記を書く意味もありそうです。

実際に来てくれる、遊びに行ってくれる。

本当にうれしい。
ありがとね。

書いてるうちに気づいたけれど、ラフティングもUFOラインも高知アイスのお店にも、行ったことないや。

いの町観光協会ホームページ

お久しぶりに凜くん(次男・中3)のお話。

今年の初め、お兄ちゃんから受験生になる弟への入れ知恵
「生徒会とかやったら高校受験に有利で。」
もうひとつやさしいお兄ちゃんからのアドバイス
「安全委員長とかほとんど仕事ないし。」
交通安全とか自転車盗難防止とかがお仕事らしい。

で、立候補。
他に立つ人がなく無投票で安全委員長に当選して生徒会の一員になる。動機が不純な素晴らしい役割。

「安全委員長はどうよ?」って聞くと

「それがよー、仕事がないって聞いちょったのに、なぜか今年に限ってうちの学校が『自転車盗難ゼロを目指すモデル校』とかに選ばれちょってよー。」

「必ず自転車にはカギをかけましよう!」って活動がなかなかめんどくさいらしい。

それから数ヶ月後、りんくんから電話。
「今、イオンにおるがやけど自転車パクられたみたい。」
「カギかけちょった?」
「かけてない。」

頑張れ、安全委員長。

ちょうど実家にしばらく使ってないじーちゃんの自転車があったので見つかるまでじーちゃんに借りて使うことになりました。

またしばらくしてりんくんがちょっと神妙な顔で聞いてきました。

「あのよー、学校に乗って行く自転車には学校のステッカー貼らんといかんがやけど、じーちゃんの自転車に貼っていいろうかねぇ。先生に注意されたけど。俺、安全委員長ながよね。」

「貼ってよし!」

「わかったー。」

またひと月程後に電話。
「じーちゃんの自転車の合鍵とかってない?学校でどっかに落とした。先生もみんなで探してくれるって言いゆうけど、明日から困るき。」

じーちゃんに聞いて合鍵見つけ出して事無きを得る。
落としたカギは数日して落し物でみつかったそうです。

「『お前安全委員長やろー。』ってすごい先生にツッコまれる。」ってこぼしておりました。

そりゃそうだ。

そして昨日の朝です。
今までのは前振りです。

朝、仕事場に着いた途端に「りんが事故して救急車に乗ってった。」って連絡が入る。

「まぁ、事故したって自分で電話してきたき大丈夫やとは思うけど。」ってお母さん。

病院に行ってみる。

元気でした。
坂を下った先の交差点にいい感じのスピードで突っ込んで車と衝突したらしい。
本人も「もっと自分がゆっくり行かんといかんかった。」って大変反省してました。

ふわっと体が浮いたらしいけどサッカーで鍛えた体と天性のバランス感覚で、ヒジとヒザを擦りむいただけで終わりました。素晴らしい受け身をとったってことです。

事故のお相手も誠実そうな方で、まぁそれぐらいで済んで良しとせんといかんね。

「気をつけて乗れやー、安全委員長。」

「あー、また先生に言われる。」

「朝礼でみんなにその包帯をぐるぐる巻いたヒジを見せて『気を付けて自転車に乗らんとこうなりますよ!』ってスピーチしちゃったらいい。身を持って証明したわけやき。」

「反面教師ってやつやね!」

ガンガンいじっちゃってください、先生方。

これがここ半年の安全委員長物語。
そんな役目をいただくまで全然こんなエピソードなかったのにね。さすがです。

元気で良かったです。

先月の終わり頃、ある会が終わった後の雑談の中でPさん(土佐和紙屋さん)から
「共済会館どうする?」
「ん?」
「あれ?聞いてない?共済会館でいの町フェスタがあって出品出来るって。」

聞いてない。
共済会館さんは高知市内のホテルです。

「どこからの話?」
「商工会。」

それを1.5m先で聞いていた商工会の宮脇さんが慌てて話に入って来ました。

「刃物はダメって言われたんですよ。決して内緒にしてた訳じゃありません。」

危険やもんね。

「そっか。じゃあショーケース構えたら並べてもらえるか聞いてみてー。」

後日「OK出ました!」の連絡をいただいて打ち合わせして並べに行く。

商工会さんと共済会館さんの素早い対応に感謝。
おかげではさみ屋も素早く動けた。

「刃物はダメ」って言われ続けてきた経験が活きました。
そんな状況の中でてんこすさんやくらうどさんに売ってもらえてる実績も。

ショーケース持って並べに行った時は他のいの産品はまだ並んでなかったので、あらためて昨日覗いて来ました。
すごく素敵なPOPも付けられていて、とてもいい感じに「いの町フェスタ」のコーナーが出来上がってました。

そこで担当の方とお話する中でこんなお言葉が。

「いの町フェスタをやるにあたって商工会さんに打診したら真っ先に『刃物は並べても大丈夫ですか?』って聞かれました。やっぱりそのままだと危険なのでお断りさせてもらってたんです。」

ありがたいことです。
わざと内緒にしてたとは思ってないけど、逆に積極的に働きかけてくれてました。本当に感謝です。

共済会館さんの「フェスタ・フェスタ」の取り組みも素敵です。

高知県内の各市町村に順番にスポットを当てて半年毎に特集していく。
小さな生産者さんでも取り組み安い、商品や情報の発信場所。

他のホテルや宿泊施設もやったらいいのにね。
特色あるお土産コーナーになるはず。県外からのお客様にとってもいい企画でしょ。

そんな中から隠れた逸品とか意外に売れる品が見つかって、その町のフェア期間が終わっても売店に並び続ける定番になったりもするかもしれん。

誰か宿泊業界に働きかけてください。

各ホテルでいろんな市町村のフェアがいつでもあちこち開催されてる高知県。あ、高知家。

いいと思うけどなぁ。

とりあえず、今年いっぱいは高知共済会館さんにいの町産品コーナーがあります。
宿泊施設ですけどお買い物だけのお客様もたくさんいるそうなのでお近くをお通りの際には、是非お気軽に見に行ってみてください。

さぁ、この場所からどんなお客様との繋がりが出来るがやろ。
まずは、担当者の方の包丁を砥いで柄を付け直したので新しいお客様一人出来ました。

いいスタート。

昨日不意に早起きしてしまったのでお客様からのメールにお返事を書きました。
お返事を書く時間が作れなくて先延ばしにしてきた先週末からいただいてた4本のメール。特注品のお問い合わせや商品到着のご報告メール。

そんな風にはさみ屋のお問い合わせフォームにいただいた中のひとつのメールをご紹介。うれしかったので。

「ふるさと納税で包丁をいただきました。小ぶりで使いやすいのはもちろん、良く切れ重宝しています。
そして、なにより、何だかかわいらしいので、4~5本持っている中でも一番お気に入りです!出番が多い!
来年もいの町へふるさと納税して、手に入れます。
手に馴染むかわいい包丁を。遅くなりましたがお礼申し上げます。」


これやね。
4~5本持っていてさらにふるさと納税のお礼の品からうちの包丁を選んでいただいたってことはたぶん包丁が好きな方だと思います。

そういう方からの「良く切れ重宝しています・手に馴染むかわいい包丁」のお言葉はうれしいー。

さらに「来年もいの町に…」ってセリフ。

これが実現すれば、ふるさと納税のお礼の品の中に並べてもらって売上を作ってくれてPRしてくれてる町や観光協会さんへの恩返しが叶います。小さな小さな恩返し。

こういうメッセージを食べて生きてます。

それをやる気に変換して、6月頭からもまた続々注文が来ていっぱい溜まったふるさと納税の包丁を砥いでます。
18件・ 25丁を仕上げて送らなければなりません。

来週初めには全て発送出来そうな感じで進んでますが、発送する前にまた11件・17丁の注文が来ました。

誰か作ってくれたら楽やのに、って思ったことは内緒です。

一歩一歩完成に近づいてますのでもう少しお待ちください。

昨日、夕方にお電話
「大阪から来て今そちらに向かってるんですけど、何時まで鍛冶場におられますか?」

「今日は7時くらいまでは大丈夫ですよ。」

で、大阪から若い植木屋さんご来店。
以前にも来てくれていて刈込鋏を買っていただいてたリピーターさんでした。

「前に作ってもらった刈込鋏、調子いいんですけど、もう少し細身のが欲しくて。」
さらに特注の切箸もご注文いただく。

「今日は高知へご旅行ですか?」って聞くと
一緒に来られてた方を指して
「この人は林業関係の仕事してまして、僕は植木屋で、高知の刃物屋巡りです。」

土佐山田の斧とか鉈の鍛冶屋さんを二軒回って来たらしい。行きつけの鍛冶屋さんがあるってすごい。
刃物屋巡りお買い物ツアー。特注品オーダーツアーか。大阪から。素晴らしい。

「今夜はお泊りですか?どちらへ?」

「かんぽの宿かなぁ、と思ってます。どっか安くて良いとこありますか?」

「あ、いので泊まってくれるのはうれしいです。『かんぽの宿』ともう一つ『くらうど』って宿があります。温泉もあるし、いいですよ。」

「お風呂いいですねー。検索してみます。」

ついにはさみ屋、いの町に宿泊客を作り出しました。そして宿の斡旋まで。

たまたま旅の行程が「土佐山田→いの」の順番やっただけやけど。
なんてことないとお思いでしょうが、地域活性化なんてことに関わってると、町に2人の宿泊客を作れたらかなりうれしい。

外から人を呼び込んでも、素通りではなく、いかに町に滞在してもらうか。どうすれば町でご飯を食べてもらえるか、泊まってもらえるか。
そんな議論にばかり触れて生きてます。

今はナビがあるし携帯で調べるのも簡単やけど、くらうどさんのパンフレットがあったらいいなぁ、と思ったので今度行ったらもらって来ます。かんぽの宿も。

どっちで泊まったかなぁ。

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