鍛冶屋日記

月別: 2014年6月

出会いがあれば別れはあります。

タイミングもあります。

終わる日は来るのだけれど、その日その時にすべきこと。
その時にほんの少しの勇気を出して一声かける。会いに行く。

家族も友達も恋も仕事も一緒やろ。

ひとつの別れをそれで終わらせないほんの少しのアクション。

その大切さを感じ取ることが出来て行動出来た自分に拍手。受け入れてくれたあの人に感謝です。

「情も大事やけど成果を出す方が大事な時」

わかります。理解します。
それを決断した人が一番しんどいのも痛いほど感じます。

でも僕は
「情で生きてその結果倒れてもいい」

その方が最終勝つと信じます。甘い。けど強い。

流れがあって抗えなくて結果は変わらなくても、モヤモヤしてたら動く。会って話す。大事。帰りのタクシーちょっと泣きそうでした。さびしいの苦手ながよね。

一緒に行動出来なくなっても、またいつか。

つなげます。

日本で一番サッカーが上手な23人です。協会がどうとかいう意見はよくわからないけれど、選手も監督も勝ちたくて勝つために精一杯やった結果やもんね。お疲れさま。次また期待して応援します。

今年は春から「もし自分が町の散髪屋さんとかクリーニング屋さんやったらどういう作戦で稼ぐか」ってことをずっと考えてましたが、最近は「もし自分が刃物を扱う問屋さんだったら」ってことを考える機会が増えました。

取引先の会社を継ぐべく社長の息子さんが都会から帰って来て仕事に入って一緒に飲む機会が出来たり、また別の会社の営業の若い子が僕の話に耳を傾けてくれて自分の考えをしゃべってくれたり。刃物業界の未来について。

こんなことずっとなかった。「不景気やねぇ。売れんねぇ。」ばっかりだったこの数年。

僕が仕事に入った17年前はうちの仕事も100%問屋さんへの卸で成り立ってました。それがどんどん減って、その穴を埋めるべく自店での研ぎ直しのアピールやイベント出店、ネット通販とかやれることをやって来てはさみ屋の未来は前途洋々です。

問屋さんに頼り過ぎない仕事の仕方です。卸先からの注文が減っても、例えば大きな取引先が廃業しても倒産しても、大丈夫な体勢。
JAさん以外に売り先を作る農家さんと一緒やね。

後継者育成とか職人の地位向上とか立派な事を謳いながら全然動けない業界や組合は気にしないようにして、違う道を選んで来ました。工場に籠って作ってばかりじゃ仕事がないから「選ばざるを得なかった」が正しいのかも。これがラッキーやったがやけど。

でも、そんなちょっと異端な一鍛冶屋の話を聞いてくれる経営者さんの卵や、やる気のある営業さんが現れたのはちょっとうれしい。
(わからん人にはどれだけ説明してもわかってもらえんけどね。)

早く総取っ替えして世代交代すればいいのに。会社も組織も。
きちんと考えてる若い世代に全部自由に預けてしまえばいい。そこでうまくいかなかった時にケツふくのがお金や地位のある方々の仕事やろ。
どこの組織も一緒です。

話を戻して、もし自分が問屋さんならどうするか。
「問屋さんからの注文なくても仕事見つけますよ。」を目指してやってきて、インターネットの凄さや製造者と消費者さんが直接繋がることの強みを感じる中で、また問屋さんがどんどん在庫を持たなくなって来た今「もしかしたら問屋さんて絶滅するんじゃないか。」とまで思ってたはさみ屋の考え。それを踏まえた上での生き残り作戦。

①問屋さんとして直営店を持つ。
出来れば実店舗。難しいならネットの中で。小売店さんとの関係で難しい面はあると思うけど。刃物のプロがプロの目でセレクトしたものばかり並ぶお店があったら素敵やもん。

②職人さんを立たせる。
○○さんの作ったものとして売る。直販野菜売り場です。信頼感とか安心感。個々の職人さんをスターにしちゃえばいい。

③値段じゃない所で勝負出来る品を鍛冶屋さんと一緒に作り出す。
それを小売店さんに納得させる技は必要やけど。それが問屋さんの腕。「安いから買って」「たくさん買ってくれるなら安くする」ではもう先がない。そんな場所に作り手の後継者なんか生まれません。

④そのためにお客様の声を職人さんに届けるべき。
良い意見も悪い意見も。これはすごく欠けてる部分だと思います。
クレームは技術向上のために必要やし、お褒めの言葉はモチベーションになります。

⑤あとは「研ぎ直し」をきちんと仕事としてとらえること。
「ダメになったら次買って」の時代は過ぎ去りました。「研げばずっと使えるき、自分で研いで」も今は通用しません。
車売るけど壊れても直せませんよ、って車屋さんから買わんもんね。すごく大事やと思います。
売るルートを逆に遡って、お客様→小売店→問屋→メーカーの道を辿れば出来ることやと思うけどなぁ。それを引き受ける鍛冶屋さんを作っていくべき。
そういうフォローは消費者さんも小売店さんも求めちゅうはず。それで、その対価はしっかりもらえばいい。

こんなとこです。

結果、自分がやってうまくいってることと、やろうとしてること、やらなければならないことと一緒でした。

これ全部出来たら土佐の刃物のクオリティーがもうワンランクアップするはず。

あとは鍛冶屋さんを育てるとともに町の金物屋さんなんかをプロデュースするとこまで行けたらいいですね。ホームセンターに駆逐されて売れなくなったお店を売れるお店に育てていく。ホームセンターとは違う方法で。

業界のしがらみとか、小売店さんと鍛冶屋さんの間に挟まれる辛さなんかを知らないから言えることかもしれません。
でも、そんなの取っ払ってやっちゃえばいいってタイプです。やってダメならまた考えます。

土佐の刃物業界がこの先も生活の中に生きていくのか、伝統産業のパターンに沿ってただただ縮小衰退していくのか。

大事な時だと思います。最後の時のような気もします。
頑張りましょう。
やり方次第でおもしろくなると思うけどなぁ。ダメかなぁ。

「ものをつくる時に、売るためにつくるのか、つくりたいからつくるのかで、出来て来るものが違ってくる。結果として惹かれるのは後者だ。」

「自分が好きな物を作る。売るために作るのではなく作るために売る。」

facebookと新聞で見つけた2つのモノづくりに関する文章。
上はモノづくりを応援する側の方の意見。
下は実際モノを作ってる方の言葉。

どちらも理解出来るし素敵なことだと思います。

が、自分と照らし合わせて違和感を感じたので書いてます。

僕は「売るため」に作ります。

お客様に求めてもらえるものを作る。需要があってうちの技術で可能なものであれば、作って値段付けて売る。

刃物が好きだから作る、ってのとは違う。
作りたいもの作って欲しい人がいれば売る、ってのも違う。

簡単に言うとこれが仕事だから作る。
これで稼がんと。

かといって宝くじ当たって働かなくてもお金いっぱい、ってなっても鍛冶屋するような気はします。

「売るために作る」と「売れるものを作る」も微妙にちがうね。

ま、作りたいから作るとか作るために売るって人も、需要がなければ記事にもならないはずなのでやってることはあんまり変わらない。

意識としては、売るために作って、買ってもらえて、使ってもらって「買って良かった。ずっと使おう!」ってものを作りたいです。

で、その先に「もうちょっと大きいのもここで買おう。」とか、「使って良かったきあいつにも教えちゃろう!」ってとこまで行けたらしめしめです。

NHKのプロフェッショナルで本田さん(ACミラン)が言ってました。

プロフェッショナルとは

「自分の仕事に対して真摯なこと。」

そうでね。
才能とか腕とか知識とか。上には上がいっぱいおって、でもその中で選んでもらいたいと思うわけで。

傲慢とか高慢とかあってはならないし、でも卑屈や弱気になる必要もない。

目一杯やって意見や感想は素直に聞く。
痛い意見もきちんと聞く。

そういうことじゃないかなぁ。

真摯であること。

そうありたい。

書きたくて書きたくてたまらなかったこと、書きます。一ヶ月溜めてました。

5月のG.Wに行った有田の陶器市であるお客様に出会いました。

1日目の終わり間際に一人の若い女性がうちのお店の前で足を止めてくれました。
「あ、興味持ってくれた!」ってビビッと感じたので声を掛けました。
でも何だか急いでるような雰囲気があったし、こっちもそろそろ片付けようかってタイミングだったのではさみ屋のチラシをお渡しして「ホームページもありますのでまた見てみてください。」って、だけでお別れ。

翌朝、陶器市2日目の出店準備が完了した頃、はさみ屋のお問い合わせフォームから佐賀の有田までメールが飛んで来ました。

「有田陶器市で水玉とストライプの柄の庖丁に興味を持ち、笹岡鋏製作所さんのチラシをいただいた者です。

今日は食器探しが目的で有田に行ったので、あんなに可愛い庖丁に出会えると思わず、しっかり手にとって見せていただかなかったことを、帰宅してから悔いています。

ブログを見ると明日も出店されているとのことですが、福岡県在住なもので、気軽に有田まで見に行くことができません。

そこで、あの庖丁の種類や大きさ、お値段などを教えていただけないでしょうか?

お忙しいところ申し訳ありません。
こちらは急ぎませんので、お返事はいの町に帰られてからで結構です。
よろしくお願いいたします。」

もうね、KOです。ノックアウト。
読んでからうれしさにちょっと震えました。
たまたま通りかかって、偶然デザイン包丁を見つけてくれて、ほんの一言二言交わしただけの方がその出会いからブログまで覗いてくれてメールをくれる。
最後に「お返事はいの町に帰ってからで」って。「いの町」って単語が光って見えました。

この時点で有田に誘ってくれた花村さんと会場の陶山神社の宮司さんには宣言しました。

「このメールもらえただけで僕はもう有田に来た甲斐がありました!」

言われた通り、佐賀遠征を終え、いの町に帰ってゆっくりお返事メール書きました。気になってはもらえているけれど、あの時あの場所ではしっかり見れてないようなので写真も添えて。お値段、サイズ、それから僕が伝えられる全ての情報を。

ここで、デザイン庖丁を一緒に作り上げたデザイナーさんと木工職人さんにはご報告。
「こんなうれしいメールもらいました!注文もらった訳じゃないけどちょっと感動してます。」

ご予算とお値段が合わないってこともあるし、思ったサイズと違うってこともある。
こうやって気になって連絡いただけただけで充分。
これがデザインの力。ドットとストライプは完璧に役目を果たしてます。

それから約一ヶ月は普通の生活。ふるさと納税に追われる生活。

5月が終わろうとするある日、このお客様からお電話がありました。

「刃が引っかかって切れなくなった裁ち鋏が出て来ました。研いでもらえますか?それと一緒にドットの庖丁も送ってください。」

うれしかったです。
電話を切って一人ぼんやりと感動。

裁ち鋏が届きました。
お手紙が添えられて。

研ぎ直しご依頼の鋏がご両親から贈られたものでとても大切なものであること。
切れなくなったけれど何処に修理に出せば良いかわからず、ずっとそのままにしてあったこと。
はさみ屋チラシを読んでくれて研ぎ直しを頼もうと思ってくれたこと。
このブログを読んだ上で研ぎ直しを頼んでも大丈夫だと思ってもらえたこと。
「この鋏でまた布をジャキジャキ切れるようになると思うととても楽しみです。」

庖丁はご自分のお誕生日に注文する予定だったこと。
けれど研ぎを頼みたかったので同時注文にしました、って。
「庖丁も楽しみです。一生大切にしたいモノに出会えたような気がしてます。」

すごいでしょ。はい。自慢です。
こんなお手紙もらったら手ぇ抜けません。いや、いっつも抜いてないけど。それでもやっぱりいつも以上にしっかりやりたいと思ったのは間違いない。

で、研ぎ直しして一昨日庖丁と共に発送。昨日到着。

さらに物語は続きます。
Facebookを通じて到着のご連絡をいただく。
「メールの写真で見た以上に可愛いです。」って。
Facebookで探してくれました。メッセージをくれました。
庖丁の写真もアップしてくれてました。いいね!しました。シェアしました。これがこのお客様との物語。

ここからは僕の気持ち。

なんかね、本当にうれしい出会いです。こんなのなかなかないです。
今まで出会ってくれたお客様、ごめんなさい。そういう意味じゃないので誤解なきよう。特別感の説明します。

その理由。
僕がここ数年やって来たこと全部が全部、本当に全部が活きて今回のご注文になった感じがする訳です。

4年前にアンテナショップ出品のためにはさみ屋チラシを作ったこと。

研ぎ直しは最も需要があって、一番簡単にはさみ屋の技術をわかってもらえる仕事として、ずっとずっと大事にしてきたこと。
これは親父さんの時代から。
それをチラシでアピールしてきたこと。

思うこと考えることやってることをこのブログに書いて来たこと。

デザイン庖丁に取り組んで完成したのは1年前。

そして、お誘いに乗って佐賀県有田へ出店に行ったこと。

お誘いは飲み会の席でした。
お誘いいただいたのは町の活性化なる名目で日々動いてるからこそ出会えた福岡の方。

何一つ無駄になってないやん。
自慢です。
「どうだ!」って感じです。

んで、どれか一つ欠けてたらこのお客様のところへ届いてないような気がします。
水玉の庖丁も心意気も。

そんなに深く考えて動いてる訳じゃないけど、やった方がいいと思って積み上げてきたこと、自然に任せて出来てきたいろんな人とのつながり。

その全てに対して
「大丈夫。それ、間違ってないよ。」
って言ってもらえた感じ。このお客様に。

まぁ、お問い合わせのメールもらった時点でほぼ同じ感動をしちょったがやけどね。本当に。

そんなこんながあるからこそ、一つ庖丁をお買い上げいただいて、鋏一つの研ぎのご依頼をもらっただけで、お客様が引くくらい喜んでます。感動してます。

本当に一つ庖丁が売れただけ。
でも、うれしい。

誰より僕が一番うれしい。

きっとまたいつか、こんなことが起こるはずなので、これからも一個ずつ積み上げたいと思います。
いろんな人といろんな場所と繋がってみます。

長い長い文章を書き上げた結果、自画自讃でした。ごめんなさい。

「それ、間違ってないよ。」

だから、今まで通り、続けます。

この前の誕生日の日に、涼太くんに聞いてみました。

「ワントップどうするー?」

「あー、大迫。」

高校2年生の涼太くんは柿谷さんの強気発言がお気に召さないようです。
そう言えば、俺も大学時代、ブラジルから帰ってきたわけのわからん若僧サッカー選手のビッグマウスにイラっとしたなぁ。
それからの20年間ずっとスゴさを見せつけられて今では「カッコえい!」としか思ってませんけど、KING KAZU。

ワントップの話の続き。

「やっぱり後ろから見たら大迫がおってくれたらやりやすいと思うで。」

涼太くんは主にトップ下やボランチのポジションの選手です。
自分がやるなら、自分がパスを出すなら。

普通のサッカーファンなら監督目線で考えるとこをチームメイトとしての目線で見ゆう。さすが。

また別の日。
ネイマールのシュートの凄さを分析するTV番組を一緒に見てたら
「あー、俺ならダイレクトで浮き球のパス出しちゅうのに。」って発言。

ネイマール特集やのにネイマールじゃないとこ見て、ネイマールにパス出した選手へのダメ出し。対抗心。

生まれついてのパサーです。

そういう見方が出来るようになった息子が誇らしくてうらやましい。

中1だった4年前とは違う見方をするがやろうね、W杯も。

楽しみ。
もうすぐ。

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