鍛冶屋日記

カテゴリー: 鍛冶屋日記

受験生の涼太くん。うちの長男。

ある高校を目指してます。

ひと月程前に体験入学に行ってサッカー部の練習にも参加。顧問の先生にサッカーの腕前(足前か)を褒められ

「うちに来いや。一緒にサッカーしよう。」の素敵な一言をいただく。

先生だけじゃなく先輩方にも良くしてもらったらしい。好かれキャラ。

このサッカー部の雰囲気が涼太のやる気に火をつけてくれました。

自分の学力と相談してなんとなく受ける学校を考えていたのがちょっとランクアップのこの学校に目標変更。

で、先日中学校の進路相談の三者面談。志望校は決まったものの、それに向かって努力はしてるものの
(本当に自分の部屋で机に向かってたりするのでびびります)
「ランクを下げるように言われるかもね。」ってお母さんと話しながら臨んだそうです。

そこで担任の先生のお言葉。

「今の時点で点数は足りてません。でも、ここに行きたい、ここでサッカーしたい!って思いは伝わるし、実際それ以来、授業態度もすごくマジメになりました。他の教科の先生からの評判もすこぶるいいです。今からの努力は必要やけど、受けてみたらどうですか?」

今まで悪ぶってチャカチャカしてたのがちょっとやる気を見せると激変に見える。もともと真面目な子には使えない武器。さすが。

『受けてみたらどうですか?』

いい響き。

晩に涼太と握手しました。
「おめでとう。志望校受験の許可が下りたそうで。」

本当にこいつは自分で見つけて自分で切り拓く。どんどんどんどん大きくなる。勝手に。

『好きなこと』があるって強い。
それがあることによって違うとこでも努力出来る。目標に向かって努力したなら結果なんてどうでもいいじゃんね。

がんばれ。

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前回書いた記事「スペシャリスト」の内容をちょっと反省してちょっと書き直しました。

きちんと考えて丁寧に仕事をしている職人さんに出会った興奮と挫折感から「片刃の包丁に関してはこの人の品を仕入れて売った方がいいかも。」って書きましたが、その部分を削除。

はさみ屋が作った包丁を求めてくれるお客様もおるはず。
丸投げしてはいけない。
逃げてはいけない。

ひとつのことを専門的にやってる人にはある部分では追いつけんかもしれんけど、自分は自分なりに努力して良いモノを作り出していかんとね。

そしてそういう品や心意気を選んでもらえるように他の部分もしっかりやる。
そう思い直しました。

先日、刃物まつりで片刃の出刃包丁を買ってくれたお客様がはさみ屋まで来てくれました。
奥さまが普段使ってる包丁の砥ぎ直しに。津野町から。

香美市のイベントで出会えた津野町のお客様がいの町の工場まで来てくれた。

刃物まつりは出店料もまあまあ高いのでその場での売り上げも大事やけど、そこからどう後へ繋がるか、の方が大切。売りっぱなしはさびしいし、売りっぱなしはもったいない。

あの時買ってくれた包丁やあの時の会話や砥いでる僕の姿やお渡ししたはさみ屋チラシがあったからわざわざ来てくれたはず。

全部あるからこその結果。うれしかったです。

楽な道を選んではいけない。

「なんでも作る。なんでも直す。」は、やめません。

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一昨日の月曜日の午後、本物職人さんに会って来ました。
僕より少し年下の片刃の包丁の砥ぎ師さん。
鍛冶屋さんが打って焼き入れまでした半製品を砥いで仕上げるお仕事です。
片刃の包丁は鍛造と砥ぎ(仕上げ)が分業になってます。

仕事の依頼で訪ねたのですが、すっかり話し込んでしまいました。
会うのは2年振り。あの時は駆け出しだったのに見事な成長を遂げられてました。忙しそう。

本気の人は魅力的。
大きな大きな刺激をもらい、それと同時に絶望感に近い自分の限界を突きつけられた感じ。

「ひとつのことだけ極めようとする人」と「いろいろやる人」の違い。

包丁の切れ味と仕上がりの美しさ(機能美)ただそれだけを考えて生きている人。
お客様への対応や売りに行くのは奥さん、プロデュースも奥さん、商工会の活動も奥さん。
(女性ならではの感性で素敵な売り方を実践されてます。写真見せてもらったけれど素晴らしかった。)

一方、はさみも包丁もナイフも刃物ならなんでも作りますよ!って人は、自分で売りに行くし、はさみ屋チラシも自分で考えて自分で両面コピーして自分で三つ折りにする。それだけじゃ飽きたらずに中学生に放物線のグラフの書き方を教えたり、バニーアイズ(ソフトのチーム)の面倒みたり、同窓会の企画会議に毎月出たり。まちかど市の会長もやるし、七色ロードの準備もしたいし、コローザも包む。
(ホームページのオーダー対応は奥さんがしてくれます。PC苦手。)

秘書欲しいなあ…とか思うけど、きっと「任せる」ってことが出来んがよね。

もちろん全部楽しみゆうし、好きでやりゆうし、結局全部やりたいわけで。それが仕事や未来に繋がると思ってやってます。
でも、いろいろやる人が一番おろそかになっちゅうのは「技の探求」ながやろうにゃあ…、ってあらためて確認させられた感じ。
何にも削れんがやけどね。

優先順位、調整、ちょっと無理する。それしか出来んし、自信を持ってそうして来ました。向き不向き。

でも、やっぱり、スペシャリストのすごさ、かっこいいなぁ…って。

教われることは教わって活かして行きたいけれど、この分野では追いつけんろうね。

なかなか刺激的な時間でした。

「ゼネラリストとスペシャリスト」

永遠の深いテーマ。

「ヒゲとボイン」みたいなことですね。手招きされます。

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「スランプ、スランプ言ってる人ほど絶好調の時がない。」

先週ラジオでFM高知の岡本さんが言ってた教訓。
聞いた瞬間ニヤリとさせられたけどじわじわ染みて来ました。気をつけよう。

日曜日は毎月一度の帯屋町での売り出し&砥ぎ直し。

知り合いの鍛冶屋さんが通りかかって声をかけてくれました。
「売れゆうかえ?」
「今日はまだ売れてない。砥ぎ直しばっかり。」
「そりゃ、合わんねえ…。」

合わんがやろか?
確かにその一日だけ見れば休み削ってなかなか売れんのに商品並べて立ちっぱなしで包丁砥ぎ直して500円ずつもらう。合わんねぇ。そう考えたら俺、合わんことばっかりやりゆう気がします。

それから一人の男の人に「こんにちは。」って声を掛けられました。

「ん?誰?」って戸惑ってたら

「キリンです!」

うれしいなぁ…。
刃物まつりでナイフを買ってくれたキリンさん。通りかかって声を掛けてくれる。本当にうれしい。気付けなくてごめんなさい。
詳しい理由はこちら

合う合わんじゃなくてこういうことやろ、って自分で納得。

そのあと、一人の若い奥様が包丁を見てくれてました。
「さっき試し切りしたんですけど、どれもあの切れ味ですか?」

「はい。全部この砥石で僕が同じように仕上げてますので。」

「じゃあ、これ下さい!」

「ありがとうございます。」

「テレビに出てましたよね?」

「あ、はい!出ました。昨日。」

「やっぱり。ちょうど包丁欲しいなぁって思ってたんですよ。」

たまたま包丁欲しいと思ってる人が、たまたまテレビではさみ屋を見てくれて、その翌日にたまたま帯屋町でそのはさみ屋のお店を見つける。試し切りがあるのでキュウリを切ってみる。切れた。だから買う。

細い細い糸やけどその細い細い糸を出来るだけたくさんの方向に撒き散らす。

んで、すごい確率で繋がった糸を商品の力やらアフターフォローやら自分の応対で少しずつでも太くして行く。

それでえいでね。

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この前の日曜日サニーマートに行くと店員さんがみんなハロウィンのコスプレしてました。

「あー、ハロウィンかー。」って思いながら買い物してるとこんな場面に遭遇。

上司らしき人が部下らしき人にPOPの内容について注意してました。
「これでいいの?伝わるの?」
「はい!すぐに直します。」

注意する人される人、2人とも魔法使い風の黒い帽子に黒いマント姿…。

もう少し季節が過ぎればトナカイがサンタさんにお説教する場面に出会えるかもしれません。

家に帰ってりんくん(中1)に
「凜、ハロウィンや。」
って言ったら

「とりっくおあとりーと!」
って勝ち誇った顔で何かくれ!って手を差し出してきたので

「じゃあ、イタズラで。」

「ん?」

「どうぞイタズラしてください。」

って言いました。

凜「そうきたか…。」

「or」ってそういうことやろ。選択権はこっち側。

(お知らせ)
明日テレビに出ます
土曜日朝9時25分からの『じゃらん!2モーニング』

よろしくお願いします。

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刃物まつりでうれしかったことその二。

大学生くらいに見える若いカップルが紐巻きナイフに立ち止まりました。こんなやつ。

女の子の方が木工細工か竹細工に使いたいらしい。

いろいろ説明して、じっくり見てもらって、また他のお店に旅立って、あちこちの刃物屋さんをぐるっと回ってからまた戻って来てくれました。

「よし!たぶん買ってもらえるぞ、あとはどれにするかやね。」って感じになりました。

でも、なかなか決まりません。
そこで彼女の雰囲気を感じ取ります。

「形はこれがいいけれど、紐の色はあっちがかわいい。」

使い勝手をとるか、見た目をとるか。どちらを妥協してどちらを優先するか。悩んでる様子。

ふと紐のストックを持って来てることを思い出し、声を掛けます。

「もしあれやったら、紐を巻き替えようか?」

「本当ですか!?」

「うん。紐持って来ちゅうき替えれるで。」

「じゃあ、このナイフにこの緑の紐でお願いします!」

メーカーやきね。
その紐全部俺が巻いたやつやきね。
時間さえもらえたら外して巻き直すなんて簡単なことです。

自分の用途に合う形にお気に入りの色の紐が巻かれたナイフを買ってもらうことが出来ました。

うれしそうな笑顔が見れてよかったです。

可能な限りお客様のご要望に添ったものを提供する。そのために出来ることはする。
(もちろん出来ないこともあるけれど。)

これもまた作り手の喜び。

こういうのを糧にまた日常の仕事です。
ちょっと疲れた。

.

脇から入りたがってる車に道を譲ったらその車が青森ナンバーで「いいことした感」2倍。

刃物まつりでうれしかったことその一。

初日の土曜日の朝、商品並べて準備が整ったところで「よし!ビール!」って思って酒屋さんのブースに行ってキリンやアサヒやノンアルコールが氷水にプカプカしてる中「ラガーください!」って朝一で飲みました。そして、もう一本おかわり。

その後、お昼過ぎだったと思います。
一人男性がカシューナイフを見つめてたので声を掛けました。
作った本人お気に入りのナイフ。こんなやつ。

「どうぞ持ってみてくださいね。」

「いいっすねぇ…。ちょっと仕事しながら考えます。」

「ん?」

「僕、松尾酒造さんのブースにお手伝いに来てるKIRINの人間なんですよ。迷うことなく『ラガー!』って言ってくれてうれしかったです。」

はさみ屋Tシャツと頭に巻いたタオルで「はさみ屋」=「ラガーの人」って認識されてたみたいです。朝一やったし。
そんで、そのラガーの人が刃物を売ってるブースを見つけて覗いてみたらしい。

「やっぱりこれ買います!」

「ありがとうございます。」

これもブランド背負って動く意味にちがいない。

僕がドライ派やっても買ってもらえたろうか。
そう考えると引きが強いね。

ビールを飲んだらナイフが売れた。素晴らしい。

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「気概であって学歴ではない。熱意であって建前ではない。」
(『神様のカルテ』より)

土曜朝のローカル情報番組『じゃらんじゃらんモーニング』さんがはさみ屋に来ました。

新高梨の直販が盛りの針木の梨屋さんの取材に来たついでに近くのお店に寄ってみようってことらしく、たまたま見つけたはさみ屋へ入って来てくれました。本当にいきなりふらっと。

「こんなとこに鍛冶屋さんがあったんですね。」

引きが強い。
そして新高梨に感謝。

前回のテレビ取材の時は全部カットされて親父さんしか映ってなかったけれど、今回は映ってるはず。

放送は少し先、11月3日(土)だそうです。なかなかもったいぶられます。

明日から2日間は3週連続売り出しの締めくくり『刃物まつり』に行って来ます。

しっかり準備して臨みたいと思います。

現在、県内各地で『土佐の豊穣祭』が開催されてます。

あちこちの既存の秋祭りを「食」に注目して連動させて売り出す作戦。

この前いのの仲間とコローザを焼いた『神楽と鮎と酒に酔う』も、毎年出店してる土佐山田の『刃物まつり』も組み込まれてます。

豊穣祭の中の2つのイベント(仁淀川と物部川)に出店者として出るやつもなかなかおらんろ、って意味の無い小さな優越感を感じておりました。

そんな中、はさみ屋の品を並べてもらってる高知のアンテナショップ『てんこす』さんに納品に行くとスタッフさんに声を掛けられました。

「笹岡さん、20日・21日空いてませんか?」

「何があるんですか?」

「帯屋町でやる豊穣祭に出ませんか?」

「その土日は刃物まつりに出るがですよー。」

「あー、そうか、残念。」

「また何かあったら声掛けてください。」

って帰って来ましたが、本当に残念。
かぶってなければ出るのに。豊穣祭3つ目やったのに。連動してるくせになんで2つが同時開催ながよ。

打率、打点は穫ったけどホームランはあと2本足りんかった、手が届くとこにあったのに、って気分。

でも、そういう風に「イベントあるけど出ませんか?」って声を掛けてくれたことがとってもうれしかったです。
取引先全部に一斉に打診した訳でなく、たまたま来たはさみ屋を見つけて「こいつなら出るかも!」って思ってくれたにちがいない。
(あちこち打診して断られて最後の方にやっと順番が回って来ただけかもしれんけど。勝手に良い方向に考えるのが得意です。)

チャンスの度に顔出してればこういう風にまた次のチャンスを与えてくれる人に出会えますき。それがうれしい。
何か伝わりづらいかもしれんけどめちゃくちゃうれしい出来事でした。

さらに昨日、帯屋町のおかみさん市で包丁砥いでたらお世話役の方にも誘われました。

「笹岡くん、来週も来れん?」

「刃物まつりが…。」

「そっちはお父さんに行かせてこっちに来たら?」

「そういうわけにも…。」

またまた残念、そしてうれしい。

俺、もう一人おらんかにゃあ…。

来年はお街の豊穣祭と刃物まつりの日程をずらして開催してください。

トリプルクラウン目指します。

秋の便りが届きました。

「咳喘息」

あー。

中間テストが近付いて来て3ヶ月振りに呼び出された教え子ありさと英語の勉強。

『serious』

「読んで。」

「んー。」

「シリアス。意味は?」

「んー、あ、乾燥した食べ物!」

「それはシリアル。」

「あ、そうや!」

「お前俺じゃないとなかなかこんなに的確につっこんでもくれんで。シリアスな芝居とかシリアスな場面とか聞いたことない?」

「ない。」

じゃあ仕方ないね。

3ヶ月目を離した隙に高3の彼女は車の免許を取得して、推薦で短大進学が決まってました。

めでたしめでたし。

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