鍛冶屋日記

月別: 2020年7月

週一回のジム通いが始まってひと月半。
ランニングマシーンに乗っかって時速7kmで20分間走れるようになりました。先週までより5分延ばすことに成功。
一塁までの全力疾走は23年間ずっと続けて来たけれど持久走(って言っても二千数百メートルしか進んでないけど)なんて高校以来の30年振り。ちょっと気持ちいいです。

 

 

研ぎ直しにまつわるエピソード。

 

いつも来てくれるお客さん(小学校時代の2コ上のお兄ちゃんのお母さん、だから70代かな)が遅めの時間に飛び込んで来て

「さとるくん、助けてー。」

子供の時から知ってるのでファーストネームです。

手にはサビた剪定鋏。

お話を聞くとこの剪定鋏は

・30年くらい前にお父さんがドイツ旅行でお土産に買って来てくれたもの

・ご主人がそれをとてもとても大切に長い間使っていたこと(ご主人にとっては義理のお父さんからの贈り物です。しかも海外からの。)

・それを知っていたから自分が使う時もそれはそれは丁寧に扱っていたこと

 

こんな背景。

 

そんなある日ご主人から

「あの鋏が見当たらんけど、知らん?」

「知らんよー。どっかにポンと置いちゅうがやろ。もっとしっかり探してみいや。」

 

ご主人が本当に大切にしていたのを理解していたので自分だって適当に扱う訳がないという思い込み。自信満々にご主人に答えたそうです。

 

「それがよー、今日畑にいったら草の中から出て来てよー。こんなに錆びて。出て来た場所からして完全にわたしの置き忘れ。」

 

ニコニコで話してくれました。
素敵エピソードです。

 

「なんとかなる?」

「大丈夫ですよー。」

「良かったー!直してもろうたら気付かれんようにこっそり返しちょかないかんき、よろしくねー。」

 

普段の「切れるように研ぎ直す」以上の意味を持つご依頼でした。
鋏の研ぎ直しの仕事をしていて良かったです。

 

昨日取りに来られてお持ち帰りいただきました。

 

ご主人が最後に手にした時よりピカピカになったはずやけど、バレんがやろか。
あえてのダメージ加工まで施すべきやったかなぁ。

 

素敵エピソードの続きが聞きたいので、またのご来店をお待ちしてます。

 

 

 

 

「よう切れよったのになんか固いもん切ったら先が開いて切れんなった。なんとかなる?」っておっちゃんがもってきた植木鋏をコンコンと叩いて噛み合わせを直しました。ほんの2分の仕事。

外へ出て葉っぱを切ってみたおっちゃん。

「バッチリ直った。いくら?」

「叩いただけやき今回はかまんよー。」の後、おっちゃんわざわざ車に戻ってリポビタンDを持ってきてプレゼントしてくれました。

常備しちゅうがや、リポD。

 

今日は23歳の若者がふらっとお店に入ってきました。バニーアイズのチームメイト。

試合では毎月会うけど、そんなにがっつり話したこともない23歳が来たので

「ん?どした?」って聞いたら

「ここでバイトさせてもらえん?」やって。

 

仕事を辞めることにしたので鍛冶屋でのバイトの打診でした。

「無理よー。」

そんなに簡単にバイト雇える仕事じゃないがよねぇ。

 

それからちょっと話をしました。

仕事について、腰掛けでバイトさせてくれって雇ってくれるようなとこなんてないこと、いい機会やき真剣に未来まで見据えて仕事のこと考えてみたら?みたいなこと。

何かヒントになったかなぁ。

 

しっかり向き合う仕事との出会い方ってどうしたらえいがやろうねぇ。

僕だって25歳までフラフラしよったし。そこにたまたま家業があったき今やりがいとか新しいやり方とかもっともらしいこと言いゆうがやけど。親父さんが鍛冶屋じゃなかったらどうなっちょったかなぁ。

 

今の脳味噌で今23歳やったら何か伝統工芸探すかなぁ。出来る限り設備を必要としないやつ。

新規開業とか独立を考えると鍛冶屋は工場から機械から初期投資がなかなか大変です。

けれど、伝統とか歴史を味方につけるのはだいぶ有利な気がします。

 

植木屋さんとかクリーニング屋さんとかポン菓子屋さんとか公務員とか電気工事士とかIT社長とか、やりがいとか使命感を持って働きゆう人がたくさん周りにはおって。

はさみ屋のように家業としてたまたまその仕事に出会った人もおるし、出会った仕事を続ける中で今の向き合い方に至ったやつもおるろうし。

マニュアルやハウツーなんてないもんね。

 

仕事を探す23歳のチームメイトには気の利いたことは何にも言えんかったけれど、仕事や会社や組織に対して愚痴らない大人になってほしいなぁ、と思いました。

そういう大人にたくさん出会えるといいよね。

 

「ま、もうちょっとしっかり考えてみいや。いつでも相談にのるき。」

 

でもなんで突然うちに来たがやろ。不思議。

 

 

 

 

 

やっぱり想いや助言を相手に届けるにはもっと圧倒的な結果が必要だと感じ始めたはさみ屋です。中途半端な結果しか出してないやつが何を言っても心を動かしたり行動を変えるところまで行けないようなのでもう一段がんばってみようと思います。

 

 

笹岡鋏製作所は今年2020年4月1日で創業50年を迎えました。

親父さんが1970年に今の場所に工場を建てて開業届けを出した春、親父さん当時27歳から50年。

(その前に12年間の修行時代があるので鍛冶屋歴は62年。圧倒的な数字。)

 

昨年から意識していた笹岡鋏製作所50年の節目でしたが、コロナ旋風でタイミング逃しまくりで今更感しかありません。ごめんなさい。

 

創業50年て一代で行けるがやね。

実際親父さんは今でもバリバリ仕事をしていて、僕がこの仕事に入ってなくてもたぶん続いていたと思います。もちろん規模やスタイルは全然違っていると思うけど。辞めてはないはず。

 

で、2代目の僕は創業100年にはたぶん立ち会えんよね。50年経ったら98歳。うん、無理。

健康に行けたとしてまぁあと30年、78歳くらいかなぁ。

 

今20歳の後継が出来たらなんとか70歳まで働いてもらって100年に届くって計算です。

やっぱり三代続くとか創業100年とかってすごいことながやなぁとあらためて思いました。

 

まぁ50年単位で意識しても仕方ないので、次の1年をいい感じで過ごして行けるように頑張ってまいります。

 

とりあえずは創業50年。めでたい。

(3ヶ月前のことやけど。)

 

 

 

 

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