鍛冶屋日記

月別: 2014年10月

毎年10月あたりはイベントラッシュの時期でなかなか忙しくてこのブログにも毎年毎年「たぼー」とか書いて「こんなに忙しかったことはない!」なんて思ってる季節ですが、今年もすごいです。

・刃物屋としては最大のイベント「刃物まつり」の準備、本番
・店舗改装に伴うお店の片付け、あふれる物の移動
・新聞登場からのお問い合わせや新しい商談
・テレビ取材2日間(これについてはまたお知らせします)

これに加えて高松(10日)と松山(25日)のイベントにデザイン包丁を送り込む。ギリギリ発送、なんとか間に合う。どちらもしっかり売っていただきました。「売ってみたい。」と思ってくれるのは本当にうれしいし、ありがたいことです。

もう本当に全部が全部重なって訳がわからん感じですが、その場その場はなんとか乗り切ってます。

ここ2週間は会や飲み会がない日はほぼ9時頃まで残業の日々。
この前は凜くんとのお勉強の予定をお休みもらって日付けが変わるまで包丁を仕上げました。終わったのが夜中の1時。自分史上最長労働。

「世の社長さんやビジネスマンはもっと遅くまでパソコンの前に座っちゅう人いっぱいおるはずや。こんなの普通。」って自分に言い聞かせながら、「それでも、こんな時間まで包丁砥ぎゆう鍛冶屋はおらんね。」なんてニヤリとしながらそんな自分に酔える性格で良かったです。夜中12時に一人工場で「俺、頑張るにゃあ」って悦に入る。

本当にありがたいことにまだまだ忙しい日々は続きそうですけど、目指すは週休2日です。

あ、2週間振りの休みだったこの前の日曜日は朝6時半出発でソフトボールして来ました。仕事の日より早起きです。
あっさり負けた試合が終わってシャワー浴びてから県展を見に行ったあと吾北までドライブしてキャンドルイベント『Sinkilow』で癒される。

動いてないと死んでしまう体質なのかもしれません。

でも、週休2日で成り立つ鍛冶屋のスタイルを確立したいです。
そのために今、やれるだけやります。
やってます。

それでも、これだけいろいろ同時に重ねんでもいいやんね、とは思うけど。

「給料なくてもいいので雇ってくれませんか?モノづくりがしたいんです。」

こんな若者がお店にやって来たのが9月の終わり。23歳の子。

「そう簡単には雇えんよー。ま、何かあったら連絡する。」って電話番号を聞きました。

親父さんに報告。「そりゃ無理や。」って言われるかと思いきや
「一人おったらえいとは思うけど。」

意外な反応。自分が引退して僕が一人になった時のこととかも考えてくれゆうがやろね。
ちょっと動いてみることにする。

いの町商工会さんに「人を雇うのに使える補助金ないかなぁ。伝統工芸の後継者育成のやつとか。」って相談したのが10月の初め。

すぐに「ありました!」ってお返事くれて話を聞く。

・研修期間は2年
・研修生の生活費が毎月15万
・指導代として雇う側にも毎月5万

すごい。

・刃物の組合に入ってなければ受けられない
・研修期間とその1.5倍の期間(2年受けたらさらにそこから3年)の間、その仕事から離れると全部返済しなければならない

これは覚悟が要ります。

「もし雇うがやったら是非使うべきです。役場の産経課長さんにも話してみたけど、大丈夫な感触でした。」

お金の出処は町と県らしい。

組合には所属してないので、刃物まつりの時に組合事務局である香美市商工会さんに尋ねてみました。
「組合の入会金は?年会費は?この補助金使うとなったらすぐに入れますか?」

OKらしい。

翌々日、県の工業振興課さんからお電話が。
「香美市の商工会からお聞きしたんですけど、実現しそうですか?予算組みとかもあるので早めにお返事欲しいです。」

こっちは制度を調べてるだけで当の本人の意志を確認してません。
「わかりました。会ってみて話ししてから連絡します。」

翌日面接。
ひと月たったけどまだその意志はあるみたい。

補助金の話をする。
雇うのならばうちはこれを使います。使わずにいきなりお給料を出すのは厳しい。3ヶ月とか一年とかで「やっぱり辞めます。」ってなるとうちにとっては損失でしかない。一年やったからって給料分稼げるようになるはずもなく。もしかしたら三年やっても戦力になるのか。微妙やね。そういう仕事。
補助金もらうと2年+3年の間に辞めれば返済になります。つまり、刃物を作ることを一生の仕事に出来る?その覚悟がないと雇えんよー。

こんなことを伝えました。

あっさり引き下がってくれました。
そこまでは思ってなかったみたい。
正直でよろしい。

はさみ屋、雇用を生み出せず。

一鍛冶屋と23歳の若者のために、いの町商工会・いの町・香美市商工会・さらに高知県までが動いてくれたのに何も起きず。
申し訳ないっす。

でも、勉強になりました。
そういう制度があることはもちろん、今まで全く考えたことがなかった「人を雇う」ってことを考えるきっかけになりました。

今現在、岐路であることは感じております。幸せなことにありがたいことに仕事はいっぱいいっぱいなので。
人を雇って仕事を大きくしていくのか、逆に仕事を絞って小さくしていくのか。

揺れてましたが、片方に傾きつつあります。
心が決まったとはまだ言えません。

本当、考えるいい機会になりました。

よく僕を雇ってくれたなぁ、親父さん。
頑張って働かんとね。

改装進行中。

中・高・予備校・大学までずっと同じ学校に通った友達に会う。

「新聞良かったねぇ。」

「ありがとう。新聞効果であるお店から商談の電話があったりしたよー。」

「すごいじゃん!あれ(デザイン包丁)を作ったことよりも、今までコツコツより良い仕事を目指して来たことが花開いた感じやね。」

「やろか?」

「そやろ。Bさんも言うもん。『やっぱり仕事っぷりが職人や!』って。」

Bさんてのはこの友達が紹介してくれた服屋さんの店長さん。
定期的に洋裁鋏の研ぎ直しを依頼してくれます。

仲良しが僕の仕事をお知り合いに紹介してくれる

依頼がくる

研ぎ直す

仲良しを通じて『仕事っぷりが職人や』って感想が返ってくる

手ぇ抜けんよね。
やり方変えれんよね。

より良い鋏とかより良い切れ味とかを求めゆうというよりは、誰かのこういう言葉が欲しくて仕事をしてます。
刃物の優劣を決めるコンテストで優勝したい訳じゃなく、売上を大きくしてお金持ちになりたい訳でもなく。(もちろんこの仕事で飯食っていくために売上拡大の努力はするけれど。)

誉められたいから、こう動く。
ほとんど子供です。

Bさんにはまだ会ったことがありません。
鋏は送ってくれます。出来上がったらお送りします。
研ぎ直した鋏を見てくれて、使ってくれてるだけです。
なので、どこをどう見てこう言ってくれるのかはわからないけれど、

「仕事っぷりが職人や。」

今まで通り続けます。

はさみ屋、高知新聞に載りました。
高知新聞に載っけてもらうのは12年振り2回目。12年前の記事はこれ。30歳の僕。

今回の記事はデザイン包丁の取り組みについて。

もう2週間前やね。
その直後にミリカにも掲載していただく。いの町観光協会さんの強力な後押しで。

新聞 and ミリカ効果でデザイン包丁のご注文が入る。

なぜだか「四国もーる」さんの通販サイトからもデザイン包丁のご注文が立て続けに3つ。しばらく無かったのに。これも新聞効果かなぁ。

高知市内のあるお店から「新聞見たんですけど、当店でも扱わせていただけませんか?」ってお電話をもらいました。願っても無いことです。来週お会いしてお話ししてきます。間違いなく新聞効果。

デザイン包丁の柄を作ってくれている木工職人さんが高松でグループ展をする(キノワクショップ)ってことでデザイン包丁を展示していただきました。ここでも4つご注文が入る。3日間並べて見てもらっただけで。伝え方や見せ方、並べる場所がバチッと合えばしっかり売れる!ってことの証明やね。

以前、デザイン包丁を買っていただいた、しょうがの女神・森島さんから「ストライプを3つ」のご注文。お友達にご紹介してくれたのかも。ありがとうございます!

「てんこす」さんはうちの品をエコポイントの交換の対象にしてくれたらしく、定期的に注文をいただくようになってます。
注文から3週間お待たせしてようやく完成させて昨日5丁届けたら「追加でもう5丁、大至急お願いします!」って。

ふるさと納税は人気爆発のため受注をストップしました。まだまだお待たせしている送り先リストが山ほどあります。頑張ります。

んーとね、すごい。
いろいろすごいです。

今まで武器が無いながらも攻め続けてきた結果、すごいことになってます。

さらに、新しいとこを攻めるためにお店を改装中です。
めちゃくちゃ忙しいのにごちゃごちゃのお店を一旦空っぽにして大工さんに明け渡し、何がどこにあるのやらわからなくなってます。

看板を変えて、内装をキレイにして、より快適に刃物を見てもらえるように。そして、今までとは違った層のお客さんの目に留まるために。

あ、昨日はTVの取材のお電話がありました。まだ実現するかどうかは未確定やけど。これも新聞効果やね。

本当にすごい。
本当にすごいけど、このままじゃダメな気がしてます。

今までにない不安。
対処の仕方がわからなくて困ってます。

忙しくて何の準備も出来てないけど、売りに持っていく品が全然揃ってないけど、今度の土日は刃物まつり。
あ、明日や。

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