岐路に辿り着く

「給料なくてもいいので雇ってくれませんか?モノづくりがしたいんです。」

こんな若者がお店にやって来たのが9月の終わり。23歳の子。

「そう簡単には雇えんよー。ま、何かあったら連絡する。」って電話番号を聞きました。

親父さんに報告。「そりゃ無理や。」って言われるかと思いきや
「一人おったらえいとは思うけど。」

意外な反応。自分が引退して僕が一人になった時のこととかも考えてくれゆうがやろね。
ちょっと動いてみることにする。

いの町商工会さんに「人を雇うのに使える補助金ないかなぁ。伝統工芸の後継者育成のやつとか。」って相談したのが10月の初め。

すぐに「ありました!」ってお返事くれて話を聞く。

・研修期間は2年
・研修生の生活費が毎月15万
・指導代として雇う側にも毎月5万

すごい。

・刃物の組合に入ってなければ受けられない
・研修期間とその1.5倍の期間(2年受けたらさらにそこから3年)の間、その仕事から離れると全部返済しなければならない

これは覚悟が要ります。

「もし雇うがやったら是非使うべきです。役場の産経課長さんにも話してみたけど、大丈夫な感触でした。」

お金の出処は町と県らしい。

組合には所属してないので、刃物まつりの時に組合事務局である香美市商工会さんに尋ねてみました。
「組合の入会金は?年会費は?この補助金使うとなったらすぐに入れますか?」

OKらしい。

翌々日、県の工業振興課さんからお電話が。
「香美市の商工会からお聞きしたんですけど、実現しそうですか?予算組みとかもあるので早めにお返事欲しいです。」

こっちは制度を調べてるだけで当の本人の意志を確認してません。
「わかりました。会ってみて話ししてから連絡します。」

翌日面接。
ひと月たったけどまだその意志はあるみたい。

補助金の話をする。
雇うのならばうちはこれを使います。使わずにいきなりお給料を出すのは厳しい。3ヶ月とか一年とかで「やっぱり辞めます。」ってなるとうちにとっては損失でしかない。一年やったからって給料分稼げるようになるはずもなく。もしかしたら三年やっても戦力になるのか。微妙やね。そういう仕事。
補助金もらうと2年+3年の間に辞めれば返済になります。つまり、刃物を作ることを一生の仕事に出来る?その覚悟がないと雇えんよー。

こんなことを伝えました。

あっさり引き下がってくれました。
そこまでは思ってなかったみたい。
正直でよろしい。

はさみ屋、雇用を生み出せず。

一鍛冶屋と23歳の若者のために、いの町商工会・いの町・香美市商工会・さらに高知県までが動いてくれたのに何も起きず。
申し訳ないっす。

でも、勉強になりました。
そういう制度があることはもちろん、今まで全く考えたことがなかった「人を雇う」ってことを考えるきっかけになりました。

今現在、岐路であることは感じております。幸せなことにありがたいことに仕事はいっぱいいっぱいなので。
人を雇って仕事を大きくしていくのか、逆に仕事を絞って小さくしていくのか。

揺れてましたが、片方に傾きつつあります。
心が決まったとはまだ言えません。

本当、考えるいい機会になりました。

よく僕を雇ってくれたなぁ、親父さん。
頑張って働かんとね。

改装進行中。

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